Description

ポルシェ・REIZ 904GTSをご紹介致します。

　当車両REIZ 904(レイズ 904)は、理想的なスポーツカーでありながら極めてわずかな台数しか生産されなかった、あの伝説的なポルシェ904カレラGTSを、
現代の路上で楽しむために作られた、精緻なリ・クリエイションモデルです。
　
　904 が発表されたのは 1963 年。それは、1962から63 年にかけて、ミッドシップ・レイアウトという高度な車体構成が、F1 からロードカーの世界にフィードバックされ始めた頃のことでした。フランスのルネ・ボネ、イタリアのデ・トマソ、ATS、そしてのちにサーキットに於いてしのぎを削るライバルとなったフェラーリ250LM など、いくつかのメーカーから、少しずつ実例としてミッドシップ・レイアウトのモデルが登場しはじめた時代です。それは、市販車に於けるミッドシップ・スポーツカーの名作であるランボルギーニ・ミウラ（1966）や、事実上フェラーリ初の市販ミッドシップ・スポーツカーとなったディーノ（1967）の登場に先行すること約 4 年、ミッドシップ・レイアウトに対するポルシェの先進性が示されています。
　
　REIZ 904 は、アメリカ在住の元レーシングメカニックであり、数々のレプリカモデルやキット・カーの製作経験の豊富な、Rey Hagio（レイ・ハギオ）氏による「最高のスポーツカーである 904 を、もっと気軽に楽しむことはできないだろうか?」という、個人的な熱意と着想をきっかけに生み出されました。
　素晴らしいレーシング・スポーツカーであるオリジナル 904 は、しかし、わずか 106 台が生産されたのみの大変な稀少車であり、その市場価格の高騰、そして維持の難しさも考えれば、もはやそれを入手して現代の路上で気軽に気持ち良く走り回すことは、困難なことと言わざるを得ません。

　ロードカー、レーシングカーをへだてず、あらゆる自動車での経験をしてきた Rey Hagio 氏は、オリジナル 904 の多くの美点を知り尽くしていたのはもちろん、いくつかの改善したくなる点もまた、把握していました。その主な点として、オリジナル 904 に於いて短期間に量産するために採用された鋼板プレス製フレームの剛性と耐久性、そして FRP 外板と組み合わせての保守管理の難しさがありました。

　オリジナルのシャーシ剛性は、当時では必要にして十分なものでしたが、現代に於いては、タイヤのグリップ性能の向上（当時と同じ銘柄でも）、路面コンディションの向上、燃料と油脂類の品質が大きく改善されたことによる性能向上により、スポーツ・ドライビングに於いて時にシャーシ / ボディの強度を超え、クルマ全体のバランスが崩れてしまうといったことが多々あります。例えば、現代のタイヤのグリップ性能に対してシャーシの剛性が負けてしまう、しかし当時と同様のタイヤはすでに無い、といった状況に直面します。ならば、オリジナルのフィーリングをきちんとキープしつつ、現代に於いてストレスフリーで乗れるタフな 904 を具現化しよう。それが、REIZ 904 の根幹を成すコンセプトとなりました。

　コンセプトを現実化する上で氏が考えたのは、鋼管材によるスペースフレームを作り、オリジナルと同じ寸法のシャーシを再現した、904 の精緻なリ・クリエイションモデルを製作することでした。鋼管スペースフレームよるシャーシは、1953 年の 550 から、63 年シーズンを戦った 718/8 RS に至るまで、904 の前世代に当たるポルシェのレーシング・モデルのフォーマットであり、高い強度と軽量さを確保できる優れた手法です。

　従って理想的な904 を作り上げるプロジェクトにおける最も重要な根幹は、高性能なシャーシを設計する事に他なりません。幸いMoto GP やフォーミュラ 1 でのフレームやパーツの素材提供の経験のあるエンジニアによる高度な技術協力も得て、数年間の試行錯誤の上、最終的にコンセプトの目標を超える、軽量且つ強靭な理想のシャーシを製作することができました。

　さらにREIZ 904 が目指した目標は、ドライビングフィールとボデイーの正確な再現にありました。元々、同氏が製作の着想を得たきっかけは、カナダ在住の904オーナーが偶然フルレストアを行っていたのを見かけ、頼み込んで分解状態の車両を正確にトレースできる機会に恵まれた事でした。いきおい、ミリ単位でオリジナルと同一のホイールベース、同一のトレッド、同一のサスペンション形式、同一の車重、同一の前後ウェイト・バランス、これらクルマの根幹を成す要素は、完全にオリジナルと同一にできることが可能となったのでした。

　構想から約15年を経てプロトタイプが完成し、様々な開発テストに基づいたアレンジもまた、適切に加えられました。最適なエンジン搭載位置の調整、サスアームを延長しサスペンション・ジオメトリーの変化を落ち着かせること、独自開発のショックアブソーバーとその適切なセッティングによる現代の公道でもサーキットでもドライビングを楽しめるチューニング幅の実現等々、こうした適切な配慮は過不足無く、多岐に渡ります。こうして作り上げられたプロトタイプ 1 号車は、サーキットと公道で 3万キロに及ぶテストを走行を行い、多数の経験とフィードバックによる改良が以降のREIZ904にも施されました。

　今回ご案内いたします3 号車は、プロトタイプ 1 号車で培われた経験をベースに、さらに多くの改良・改善が施され、エンスージャスティックな観点からのポルシェ 904 の再現という目的のみならず、一台のクルマとして、より一層の高い完成度を誇る仕上がりとなっています。エンジンは耐久性を考慮してVW製のレース用チューニングを受けた2.0L、4気筒／125馬力を搭載していますが、車両重量僅か660Kgという驚異的な軽量ボデイーには有り余るパワーと言えます。オリジナル・ロードバージョンの904が650kg／155馬力ですから、これに匹敵する性能を有しています。

　より強靭な剛性を持ち安全性に優れた（オリジナルにはロールゲージすら無い）しなやかな足回り、強力なブレーキ、優れた高速安定性、ポルシェ914用5速ミッションのタッチも良好です。乗降性を除けば普段使い可能なほどフレキシブルに富んだ乗り味を持っています。さらに正確に再現された外観はオリジナルと同一で、その再現性の正確さは、オリジナルの904オーナーからライトレンズなど外装パーツの供給を打診されるほどです。それはインテリアに至っても同様で、シート生地もオリジナルと同じ素材を使用しています。

　まさに普段使い可能なレベルまで到達している完成度を持つREIZ904は、ネバダ州ラスベガスにあるファクトリーの工房にて1台1台丁寧に制作されており、日本向けの車両はボデイー載せたローリングシャーシーの状態で国内に運ばれ、トータルな作業を経て完成されています。現在、日本国内にオーダー車両を含めて6台、オーダーを受けてから仕様により差がありますが、2年から3年の製作期間を経てデリバリーされています。

　今後も、売り物として出てくるケースは非常に稀だと思われます、ご興味のある方は現車をぜひ一度ご覧になってください。