Description

メルセデスベンツ450SEL6.9セダンをご紹介致します。

　メルセデス・ベンツW116型は1972年から1980年まで生産・販売されました。このW116型は、メルセデスで初めてSクラスと正式呼称されたモデルですが、以前から同クラスのフルサイズのセダンは非公式に「Sクラス」と呼ばれていましたが、正式にはこの型からがSクラスです。
　ボディサイズが旧モデルのW108/W109よりも大型化したにもかかわらず、衝突から乗員を守るための新しい安全基準で設計されたため、室内は先代モデルよりも若干狭くなっていますが、世界初のABSの搭載や、ハイドロニューマチックサスペンションの採用、経済的なターボディーゼルエンジンの採用など先進的な試みが盛り込まれたメルセデスらしい設計となっています。

　当車両はその中でも、排気量の大きい6.9L/V8エンジンを搭載した450SEL6.9と言う特別なモデルになります。車体はロングホイールベースのボディーを持ち、後席のスペースは余裕のあるゆったりとした空間を持っています。メルセデス600リムジンから譲り受けた系統のM100エンジンをさらに排気量アップ、その強力な心臓は286馬力を発生。静粛性に富んだジェントルでスムーズな一面、アクセルを踏み込むと途端に獰猛で強烈なパワーを発生するユニットで、ドライバーを驚かせます。その凄まじさはフル加速すれば黒々と路面にブラックマークを残すほどです。

　それほどの高性能を持たせた特別なモデルにも拘らず、外見や内装に関して、スタンダードの450SELと全く見分けが付かない事で、かろうじてエンブレムを見て6.9と判断できるくらいですが、これも当時はエンブレム自体もオプションとして取り付けていないクルマも多数あり、先代の300SEL6.3同様、あえて高性能を主張しないのはメルセデスの伝統でしょうか。

　ハイドロニューマチック方式のサスペンションは高速走行では安定した走りを見せ、高速ロングツアラーとしては当時最高レベルの乗用車でした。世界中のVIPに愛用されて、その性能とステイタスは他に類を見ないクルマとしてメルセデスベンツの最高峰のポジションに君臨したモデルです。

　その強力かつ安定した走りは健在で、優れたブレーキ性能と直進性。ストローク感のある乗り心地は、当時のメルセデスが持つ独特のもので、コーナリングでも大きな図体の割には意外にフットワークに優れています。市街地走行から高速、ワインデイングロードまでどんな状況に於いても常に安定しており、今でも何ら不安の無い走りを体感できます。それでも有り余る大パワーは濡れた路面などでは不用意なアクセルコントロールは禁物でしょう。

　室内は大径のステアリングにゆったりとしたサイズのシート、視認性に優れたメーター類や使いやすいスイッチ類など、乗用車としてのスタンダードともいえる設計で、安全性を追求したメルセデスベンツの哲学が大きく反映されています。そこは6.9といえどもスタンダードに準じた保守的なままです。
「最善か、無か。」といったポリシーはそこかしこに徹底して盛り込まれており、その素晴らしいクルマ造りは、他のメーカー高級車とは一線を画す究極のセダンでした。
　インテリアのベロア地のシートはレザーより最高級な素材として位置付けられるもので、座り心地に優れ、夏はべたつかず冬は保温性に優れたもの。今でも充分ロングドライブをこなせる実力を持って居ます。

　当車両は、昭和54年に登録・販売された1台。以後、大切に維持されて来たクルマで、現在、走行42,000キロと低走行で、内外装はご覧の通りフルオリジナルのまま、素晴らしいコンディションを保っています。
　過去の整備記録も多数ドキュメントされており、ツールやジャッキなどの備品もすべて残されています。今後もまず出会うことの無い1台だと言えます。

　是非一度、現車をご覧になってください。